「この車で、日本の夏を無事に越せるのだろうか……」
1985年製のウエストフィールド・セブンに乗っていると、水温計を睨みながらそう自問自答する瞬間があります。これまではロードスター用のファンを流用していましたが、取り付けに無理があり、シュラウドとコアの干渉も怪しい状態でした。
もっと薄く、そして確実に冷えるファンが欲しい。
チャットGPTなどのAIはミラやワゴンR用を勧めましたが、私は自分の足で解体屋へ向かいました。ネット上のデータ以上に、旧車維持には現物合わせの直感が重要だと信じているからです。


実測こそがすべての起点。縦30cm、横50cm。この限られた狭小スペースが、今回の戦いの舞台です。
1. 解体屋で出会った3,300円の救世主
広大な解体屋のパーツの山から見つけ出したのは、スズキ・アルト用のファンでした。ミラジーノ用と形状は似ていましたが、決め手は鉄枠が持つ剛性感です。年式がわずかに新しかったことも背中を押してくれました。

「ヤフオクの送料を考えれば、ほとんどタダのようなものだ」と自分に言い聞かせ、3,300円を支払って持ち帰りました。実際にラジエーターにあてがってみると、まるでこの車のために設計されたかのようなシンデレラフィット。しかし、本当の格闘はここからでした。
2. 死と怪我が隣り合わせの工具を手に、バッサリと切り落とす
いざ組み込みを開始した途端、厳しい現実に直面しました。あちこちが思い切り干渉してしまうのです。ここで、ガレージにおいて最も恐ろしく、しかし最も頼れる相棒であるサンダー(ディスクグラインダー)を召喚しました。

火花を散らしながら、干渉するステーや枠を迷わずバッサリと切り落としていきます。切り口にはシャーシブラックを吹き付けて保護。最終的には、垂直部分の干渉を回避するために「ファンを上下逆さまに取り付け、Y字構造を活かして逃がす」という、逆転の発想に辿り着きました。











執念の現物合わせ。純正の形にこだわらず、機能を実現するために姿を変えていきます。
3. 昨日切り落とした破片に、新たな命を吹き込む
固定用のステーをどう作るか悩んでいたその時、足元に転がっていた「昨日切り落とした鉄の破片」と目が合いました。
「こいつなら、使える」


削り、穴を開け、丁寧に曲げる。そして、迷うことなくフレームへ直接溶接を施しました。最初はステーのしなりからくるワナワナとした振動に悩まされましたが、さらに余っていた端材をサポートとして追加溶接することで解決しました。
「我ながら下手くそですが、くっついてしまえば良いのです。75点!」
自分に少し甘い点数を付けながらも、その剛性はロードスター流用時とは比較にならないレベルに達しました。




[画像:溶接されたステーとファンの固定部]
剛性の追求。不安定な振動を、追加の溶接で完全に封じ込めました。
4. 結論:静かすぎて不安になる、という最高の贅沢
配線はシンプルな2ピン仕様です。自作の配線で繋ぎ、冷却水のエア抜きを経て、いよいよテスト走行へ。水温が100度に達した瞬間にファンが自動起動し、ぐんぐんと温度が下がっていく様子は、これまでの苦労が報われる瞬間でした。


何より驚いたのは、その静かさです。インジケーターランプは点灯しているのに、動作音が静かすぎて「本当に回っているのか?」と不安になるほど。1985年製の車体に、現代の軽自動車が持つ静粛性と効率が宿った瞬間でした。





これで、もう真夏の渋滞も怖くありません。
ネットのスペック表やAIの推奨に頼るのも一つの手でしょう。しかし、自らガレージで火花を散らし、鉄くずをステーに変える現物合わせの時間こそが、旧車を一生モノの相棒へと昇華させていくのだと確信しています。


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